ホリーとの朝のさんぽの帰り道。
坂道をたーっと駆け降りてきた 1 匹の小型犬。茶色いトイプードル。首輪もなにも付けていない。
交差点の向こうを走っていく。
道路にはみ出して、車が急ブレーキを踏む。
あぶない、あぶないよ! 思わず声が出てしまう。
あまり小さめのわんこに興味のないホリーだけれど、自由に走っている子が楽しそうに見えたのか、後ろ足で立ち上がって興奮している。
信号が変わるのももどかしく、あわてて後を追った。
数メートル先を走っているのを、しゃがんで「おいでー」と呼ぶと、振り返り、ホリーを気にしながらこちらにやって来た。
あわててホリーのおやつをさぐり、手から差し出す。
顔を寄せたときに、ホリーが飛びつこうとしたので、ぱっと後退りする。
そのまま行ってしまいそうになったので、「おねがい、おねがい、行かないで~」と祈るような気持ちでもう一度手を差し出した。
一瞬ためらった様子を見せたけれど、ゆっくり戻ってきて、おやつを食べはじめた。
左手でホリーを制しつつ、右手で迷子をだっこ。
「はーーーっ」と安堵のためいきをついたのも束の間、さて、どうしましょう。
あたりを見回してみたけれど、追いかけてくる飼い主さんの姿はない。
とりあえず、もう逃がさないようにしなければと思い、いったん家に帰って態勢を整えることにした。
しかし、一番近い経路で家に帰るには、百段を超える地獄の階段を登らねばならないのだ。
迷子ちゃんは、ちいさなトイプーな上にまだ子犬のようで、抱っこしてもとても軽いのが幸い。
しかし、そんなところへ、テンションの上がったホリーが、「その子と遊ぶ!遊びたいの!!」と体当たりをかましてくる。
なんの修行だよーと思いながら、なんとか地獄の階段を登り切り、汗だくで家に帰る。
一息ついて、わんちゃんの身体を調べてみる。ちいさい、可愛い、トイプーの女の子。やっぱり、首輪も迷子札もなにもついていない。
でも人なつっこいし、毛並みもきれいだ。シャンプーのようないい匂いがして、爪もきちんと切ってあり、お手入れが行き届いている。どう見ても、放浪犬や放棄犬とは思えない。
たぶん、朝のさんぽで首輪が抜けたかなにかで、逃げ出したばかりなんだろうな。飼い主さん、心配しているだろうね。
「あそぼう!あそぼう!!」と誘うホリー。びびるトイプーちゃん。
「おばちゃん、この子なんなの? 」 と私の足にくっつくトイプーちゃん。かわゆい。
喧嘩をするようなら隔離をしようと様子を見ていたけれど、やっぱりうちの子は天使だ。おちびさんが乗ってこないと見ると、しつこくしないで自分から離れて行った。
で、トイプーちゃんはというと、とことこやってきて私の膝に脚をかけ甘える。まさに、動くテディベア。ホリーはこういう甘え方をしないので新鮮。
とか、ほっこりしている場合ではなくて。
こういうときって、やっぱり交番に連れて行くんだよね。
うちには小型犬サイズの首輪もリードもないので、抱っこして連れてゆくしかない。あまりにも心もとないので、ホリーが病院でシャンプーしてもらったときに付けてもらったバンダナを首に巻いた。大きめのおさんぽバッグにトイプーちゃんの下半身をすっぽり入れて、「ホリーも行く!」とアピールするホリーに、「いい子でお留守番してね」とお願いして、最寄りの交番へ急ぐ。
車どおりの多い道を通らなければならなくて、トイプーちゃんは怖いのかきゅんきゅん鳴いて、もがいて逃げ出そうとする。「大丈夫、大丈夫」と声をかけながら、冷や汗もので交番にたどり着く。
(ホリーがうちの子になって以来、おまわりさんに相談に行くのはこれで 2 回目です・・・。)
「わんちゃん拾ってしまったんですけど」
若いおまわりさんが親切に対応してくれた。
万が一、飼い主さんが見つからなかったときには私が保護して里親さんを探すので保健所には送らないでほしいとお願いした。
おっさん (早朝からトレランに出かけて行った夫) にはたぶん、怒られるかもしれないが、ずっと抱っこして、安心して身を任せてくれているこの可愛い子が殺処分なんてことにでもなったらいたたまれない。
一方で、こんなきれいなわんちゃんが野良子の筈はないし、まかり間違ってそうであったとしても、埼玉で里親ボランティアをしている友人や、ホリーの実家のお母さんたちに助言を貰って里親探しをすれば、これだけ可愛い子ならば引く手数多だろうという計算もあった。
で、交番に預けて、30 分ほどして、おまわりさんから「飼い主さん見つかりました!」という電話連絡があった。
あー、よかった、よかった。絶対みつかるって思ってたよ。
でも、あの子にはもう会えないのね。
ちょっとだけ、さびしいな。
ちょっとだけね。
<<おかぁさんには、ホリーがいるじゃない。>>
そうだよね。
可愛いトイプーだねー。
返信削除まだお家にいたなら遊びに行くところだよ。
いや、ホリーにも会いたいんだけどね。
ちっこいのモフモフしてみたかったよー。
愛玩犬と呼ばれるだけあって、
返信削除「人に可愛がられること」を目的として生まれたような子だったよ。
こういう事情でなかったら、もっとじっくりゆっくりモフモフしたかったな。
でも、よその子と触れ合って、ホリーの優しいところもよくわかったよ。
ほんとにホリーは天使だよー。